x402は暗号コンセプトの「投機がピーク」というジンクスを打破できるか？

一般的な暗号資産コンセプトとは異なり、x402は多くのWeb2テック大手の注目を集めており、これらの企業はすでに本プロトコルの実際の導入を開始しています。

執筆：100y.eth

翻訳：Saoirse，Foresight News

コアポイント

• 暗号資産業界では、多くの新しいコンセプトが「バズ・インフラ構築・アプリケーション普及」という3段階を経ますが、ほとんどのコンセプトはバズ段階からインフラ段階への移行に失敗し、最終的に市場の関心を失います。
• x402はCoinbaseが開発したAIエージェント決済プロトコルであり、AIエージェントがブロックチェーンを通じて自律的に決済や有料リソースの取得を行うことができ、人間の介入を必要としません。
• 最近のx402関連トークンの価格高騰から見て、このプロトコルはすでにバズ段階に入っています。しかし他の暗号資産コンセプトと異なり、Cloudflare、Google Cloud、Anthropicなどの大手企業が積極的にx402を導入しており、インフラ構築段階が急速に進んでいます。
• エージェントコマースの潜在力を考慮すると、x402はアプリケーション段階に進む可能性が高いですが、ボトルネックは消費者心理と信頼システムの変化にあります。Accentureのデータによると、エージェントコマースの大規模な普及を阻む最大の障害は、消費者がAIエージェントを信頼していないことです。
• しかし、Gartnerは2030年までにAIエージェント主導の取引量が30兆ドルに達し、エージェントコマースが将来避けられない巨大市場になると予測しています。その時、ブロックチェーン業界はステーブルコインに続き、x402によって2つ目のグローバルな「プロダクト-マーケットフィット（PMF）」を見つけることになるでしょう。

バズ・インフラ・アプリケーションのサイクル

新コンセプトの「生存試練」

暗号資産業界は変化が激しく、新しいコンセプトの盛衰サイクルは数ヶ月にも満たないことが多く、注目度の集中と消散は他業界をはるかに上回ります。大きなトレンドで見ると、NFT、ゲーム、メタバース、モジュラー型ブロックチェーンなどの人気コンセプトもこのパターンを経験しています。小規模な事例では、最近の「予測ガバナンス（Futarchy）」が典型例で、短期間で盛り上がった後すぐに市場の視野から消えました。

暗号資産業界では新しいコンセプトが次々と登場するため、あるコンセプトが本当に「実用化」されるには多くの障害を乗り越える必要があります。このプロセスを3つの段階にまとめます：

1. バズ段階：新しいコンセプトが初めて広く注目される時期。この段階では、コンセプトとわずかに関連する既存プロジェクトや新規の小規模プロジェクト、関連するMemeコインでさえ、価格が数十％から数百％急騰することがよくあります。もしコンセプトが次の段階にうまく移行できれば価格は安定しますが、ほとんどの場合、数週間または数ヶ月で価格が暴落し、関連プロジェクトも姿を消します。
2. インフラ段階：新しいコンセプトの潜在力と実用性が検証されると、開発者はそのコンセプトに基づいた実用的なプロダクトの開発を始めます。プロダクト開発には数ヶ月から1年以上かかるため、曖昧で弱いコンセプトはこの段階で「消滅」します。しかし本当に意味のあるコンセプトは、この段階で安定した注目を集め、実際のユースケースを生み出し、分野全体も徐々に発展・拡大します。
3. アプリケーション段階：ここまで到達できるコンセプトは「ごくわずか」です！暗号資産分野では、AMMs（自動マーケットメイカー）、CLOBs（中央リミットオーダーブック）、レンディングプロトコル、ステーキング関連プロトコル、ステーブルコインなど、少数のコンセプトだけがこの段階に到達しています。アプリケーション段階に入ったコンセプトは「プロダクト-マーケットフィット（PMF）」を実証し、今後も新しいプロトコルが次々と登場し、多くのユーザーが積極的に参加します。

暗号資産業界の典型的な事例

それでは、最近暗号資産系SNSで注目されているホットトピックは、現在どの段階にあるのでしょうか？

• 予測ガバナンス（Futarchy）：前述の通り、Vitalikの言及でバズ段階に入りましたが、その後熱が冷めました。最近はSolanaのICOプラットフォームで再び短期間盛り上がりましたが、わずか数週間で再び人気を失いました。コアな理由は、予測ガバナンスが複雑なガバナンスシステムを伴い、人類社会の世代を超えた価値観の変革がなければ大規模な普及は難しいことです。
• 分散型エネルギー：昨年、多くの企業が一流VCから投資を受けてバズ段階に入りました。最近ではDaylight社がFrameworkとa16zcryptoから7,500万ドルの投資を受けて一時的に市場の熱を再燃させましたが、注目は続きませんでした。根本的に、分散型エネルギーは物理的なインフラが必要な分野であり、インフラ構築段階には必然的に長い時間がかかります。
• ロボティクス（Crypto x Robotics）：ロボティクスの発展経路も上記の事例と似ています。「暗号資産＋AI」コンセプトが盛り上がる中、「暗号資産＋ロボティクス」プロジェクトOpenmindがPanteraなどから2,000万ドルの資金を調達し、ロボティクス分野への関心を高めました。その後、多くの中小プロジェクトやMemeコインの価格が急騰しましたが、アプリケーション段階に入るにはまだ時間がかかります。ただし、「暗号資産＋ロボティクス」コンセプトの巨大な潜在力を考慮し、Openmindを含む多くの開発者が積極的にプロダクト開発を進めています。

これらの事例から分かるように、暗号資産業界で新しいコンセプトが「誕生」から「実用化」まで進むのは非常に困難です。

しかし、最近暗号資産系SNSで急速に注目を集めているx402プロトコルは、この「魔法の壁」を素早く突破し、アプリケーション段階に順調に進む可能性がありそうです。では、x402は一体何が特別なのでしょうか？

x402プロトコルは成功するか？

x402プロトコルの概要

x402プロトコルはCoinbaseが開発したオープンな決済プロトコルで、AIエージェントが人間の介入なしに自律的に決済や取引を完了できることがコア機能です。x402を通じて、AIエージェントは複数のブロックチェーンネットワーク上でステーブルコインを使ってサービスの支払いができ、「即時決済」の利点を持ち、アカウント登録、サブスクリプション開通、APIキー設定などの複雑な手順を必要としません。

出典：Coinbase

HTTP 402は「支払いが必要」を示すネットワークステータスコードですが、長年ほとんど実際には使われていません。x402プロトコルはこのステータスコードを活用しています。AIエージェントがAPIリクエストを送信すると、サーバーはHTTP 402ステータスコードを返し、「支払いが必要」と通知します。AIエージェントはこの通知を認識し、自動的にステーブルコインで必要な料金を支払います。具体的な流れは以下の通りです：

1. AIエージェントがニュース、APIインターフェース、データなどの有料サービスにアクセスしようとすると、サーバーは「HTTP 402 支払いが必要」ステータスコードを返します。このレスポンスには「支払いが必要」という通知だけでなく、支払い方法、金額、受取人ウォレットアドレスなどの重要情報も含まれます。
2. AIエージェントはサーバーが提供した情報に基づき、対応する金額のトランザクションを生成し、デジタル署名を付与してサーバーに送信します。
3. サーバーはトランザクションを「ファシリテーター（Facilitator）」に渡し、ファシリテーターが支払いの有効性を検証し、ブロックチェーン上でトランザクション処理を完了します。
4. 支払いが完了すると、サーバーはAIエージェントにその有料サービスへのアクセス権を開放します。

x402の価値は「AIエージェントに決済標準を提供する」だけにとどまりません。決済がブロックチェーンのステーブルコインで行われるため、従来困難だった「マイクロペイメント」機能を実現しています。AIエージェントは実際の利用量に応じてリアルタイムでAPIを呼び出したりサービスに支払ったりでき、人間ユーザーもAPIキー管理やアカウント登録などの複雑な手順を回避し、マイクロペイメントで直接コンテンツを取得できます。

すでにバズ段階に突入

出典：a16zcrypto

x402プロトコルは2025年5月にリリースされ、当初は中程度の注目しか集めませんでした。しかしa16zが発表した「2025年暗号資産の現状：暗号資産が主流になる年」レポートで言及されたことで、一気に注目度が高まりました。Gartnerは2030年までにエージェントコマース市場規模が30兆ドルに達すると予測し、a16zはx402がAIエージェントのコア決済チャネルになる可能性を指摘しています。

x402がバズ段階に入った最も直接的なサインは、関連トークンの価格高騰です。例えば、「AIエージェント」コンセプトが盛り上がるたびに連動して上昇するトークン$VIRTUALは、わずか2日間で40％の上昇を記録しました。他の関連トークンも大幅に上昇しており、具体的な動きは下記のチャートの通りです。

表面的には、x402は他の「バズ型」暗号資産コンセプトと変わらないように見えます——中身がなく表面的で、市場の熱狂だけで動いているようです。実際、多くの新しい暗号資産コンセプトはこの道をたどります。小規模プロジェクトやMemeコインの価格が急騰した後、すぐに沈静化します。

しかしx402はこれらのコンセプトと本質的な違いがあります。第一に、「AIエージェント決済」は暗号資産分野だけでなく、AI業界全体でも実際の価値を持つ「ポテンシャル型」テーマです。第二に、多くのWeb2企業がx402に積極的に注目し、導入を進めています。これらの要素は、x402が長期間バズ段階にとどまらず、迅速にインフラ構築段階へ移行する可能性を示しています。

インフラ構築段階が進行中

現在、x402プロトコルは「バズ段階」と「インフラ段階」の両方にあります。実際、バズ段階に入る前から、多くのWeb2およびWeb3企業がx402のインフラ構築を始め、自社サービスに統合していました。したがって、より正確に言えば、x402は「インフラ段階」からスタートしたと言えます。

興味深いのは、一般的な暗号資産コンセプトとは異なり、x402は多くのWeb2テック大手の注目を集めており、これらの企業はすでに本プロトコルの実際の導入を開始しています。

Cloudflare

Cloudflareはインターネットインフラとセキュリティソリューションを提供する企業で、最近は「Agents SDK」（開発者がAIエージェントを迅速に作成・デプロイするためのツール）や「Workers AI」（AIモデル推論実行環境）などのサービスも展開しています。

CloudflareはCoinbaseと共同で「x402 Foundation」を設立し、x402エコシステムで非常に活発に活動しています。同社の「Agents SDK」サービスはすでにx402プロトコルを統合しており、AIエージェントがインターネットを通じて簡単に決済を完了できるようになっています。

注目すべきは、Cloudflareが最近AIエージェント向けに設計された米ドルステーブルコイン「NET Dollar」をリリースしたことです。今後、「Agents SDK」を基盤に開発されたAIエージェントは、x402プロトコルとNET Dollarを通じてエージェントコマース活動を展開できるようになります。

Vercel

Vercelはクラウドプラットフォーム企業で、主に開発者がWebアプリを迅速に構築・デプロイできるよう支援しています。最近、Vercelは「Vercel AI SDK」と「Vercel MCP」などのサービスをリリースしました。前者は開発者がAIエージェントを構築・デプロイしやすくし、後者はMCPインターフェースを通じてプロジェクトにアクセスできるようにします。2025年9月、Vercelはx402-mcpツールをリリースし、AIエージェントがMCP経由で有料APIやリソースにアクセスする際、x402を利用して自動的に決済できるようにしました。

Google Cloud

Google Cloudは以前、A2Aプロトコル（AIエージェント間通信協調プロトコル）をリリースしており、このプロトコルには「AP2（エージェント決済プロトコル）」という拡張モジュールが含まれ、AIエージェントの自律的な決済をサポートしています。x402プロトコルはすでにこのシステムに統合され、「決済エンジン」としてAIエージェントの実際の取引を支援しています。

Anthropic

Anthropicは有名なAI企業で、Claude大規模言語モデル（LLM）を開発しており、ユーザーはこのモデルを使ってAIエージェントサービスを構築できます。また、Anthropicは「MCP」というオープンソース標準もリリースしています。このプロトコルはAIモデルが外部ツールやデータにアクセスする際のルールを定義しています。現在、Claude MCPはx402プロトコルをサポートしており、Claudeが有料MCPツールにアクセスする際、自動的に決済を完了できます。

Visa

世界最大のクレジットカード決済ネットワークであるVisaは、最近Cloudflareと共同で「Trusted Agent Protocol」を開発すると発表しました。このプロトコルはエージェントコマースにおけるAIリクエストの信頼性を検証でき、x402プロトコルを通じて決済もサポートします。

その他の参加者

Coinbaseの発表によると、CircleやAWSなどの企業もx402プロトコルと協力しています。

企業やプロトコルレイヤーのサポートに加え、開発者向けツールも徐々に登場しています。例えばx402scanは、x402を採用しているサーバー、取引履歴、決済プロセスを可視化できるブラウザツールで、ユーザーが「どのサービスがどのファシリテーターを通じて、どのネットワークで決済を完了したか」を明確に把握できます。x402エコシステムが拡大するにつれ、今後さらに多くの企業やツールが参加し、エコシステムがより豊かになると予想されます。

x402はアプリケーション段階に進めるか？

アプリケーション段階にはまだ距離がある

出典：x402scan

関連トークンの価格高騰や大手企業の導入などから、x402はすでに「バズ段階」と「インフラ段階」の両方をカバーしています。しかしx402にとって重要なのは、「アプリケーション段階」に順調に進めるかどうかです。

x402scanのデータによると、これまでに約5.5万人のバイヤーが1,000人のセラーに対して87.9万件の取引を行っています。取引件数だけを見るとかなり多いように見えますが、総取引額はわずか92.3万ドル程度です——この規模は、x402が「アプリケーション段階」にはまだ大きな距離があることを示しています。

アプリケーション段階に進むための鍵となる条件

x402がアプリケーション段階に進むには、どのような条件が必要でしょうか？最もよく挙げられるコア要素は「消費者心理」と「信頼システム」です。私のように長期的にx402を注視している業界関係者でさえ、AIエージェントがビジネスシーンでレコメンドを提供することは受け入れられても、資金を完全にAIエージェントに管理させることにはまだ不安があります。

現時点では、最先端の大規模言語モデルでさえ、時折誤った情報や期待外れの結果を出すことがあります。心理的な観点から、消費者はこのようなモデルを基に開発されたAIエージェントに決済業務を任せることを信頼しにくいのです。実際、Accentureが金融機関に行った調査では、87％の回答者が「顧客がAI決済を信頼していない」ことがコアな問題だとし、78％が「AIロボットが無許可の決済や詐欺に関与する可能性」を懸念しています。

2つ目の重要な要素は「企業のインフラ現状」です。Accentureのデータによると、85％の金融機関が既存のレガシーシステムでは「大規模なエージェント決済」需要に対応できないとしています。その中でも「エージェント決済の不正取引に対応するシステムが不足している」ことが、業界がアプリケーション段階に進む主要な障害の一つです。

まとめると、x402がアプリケーション段階に進むには、企業がエージェントコマースに適した最適化システムを構築し、同時に消費者がそのシステムを信頼できるようにする必要があります。しかし、インフラ開発も消費者心理の変化も長い時間が必要です——そのため、x402がアプリケーション段階に進むプロセスは予想よりも長くなる可能性があります。

ブロックチェーン業界への意義

Gartnerは2030年までにAIエージェントが30兆ドルの調達規模に影響を与えると予測しています。AIエージェント決済市場はまだ初期段階ですが、x402プロトコルはすでに「業界標準」となる可能性を示しています——これはGoogle、Anthropic、Cloudflareなどのテック大手がx402を使ってAIエージェント決済ビジネスを展開していることからも明らかです。

x402エコシステムの活性化が進むと、暗号資産市場にはどのような変化が起こるでしょうか？最もあり得る予測は、最近のx402関連トークンの高騰相場が長期的には続かないということです。「暗号資産＋AI」分野が盛り上がって以来、この分野は実際的な意味を持つコンセプトへと発展し、多くのイノベーションが生まれています。しかし、歴史を振り返ると、初期のバズ段階で急騰した小規模プロジェクトのトークンやMemeコインは、その後の価格パフォーマンスが芳しくないことがほとんどです。

出典：x402scan

x402がブロックチェーン業界にもたらす明確な価値は、すべてのAIエージェント決済がブロックチェーンネットワーク上で完結することです。現在、ほとんどの取引はBaseネットワークで行われ、一部はSolanaネットワークで行われています。しかしx402プロトコルは設計当初から「ブロックチェーン非依存性」の原則に従っており、あらゆるブロックチェーンネットワークに適応できます。つまり、x402エコシステムが拡大するにつれ、決済活動はBaseやSolanaに限定されず、需要と供給のドライブによってより多くのブロックチェーンネットワークに広がっていくことになります。

エージェントコマースは将来避けられない巨大市場であり、すべての決済は最終的にブロックチェーン上のx402プロトコルを通じて完了します。その時、ブロックチェーン業界はステーブルコインに続き、x402によって2つ目のグローバルな「プロダクト-マーケットフィット（PMF）」を見つけることになるでしょう。